月下の誓約


 少しの間月を眺めた後、和成は視線を廊下の先に戻した。
 そして自室の前を素通りし、渡り廊下の門をくぐった。

 門の先にも廊下は延々と続いている。
 君主の居室はとにかく広い。

 今は紗也がひとり、側仕えの女官数名と暮らしているが、元々は君主の家族が暮らしていた。

 和成はこの広い居室のどこに何があるのかは知らない。
 謁見の間だけ知っていた。

 あらかじめ連絡しておいたので、謁見の間にたどり着くとすぐに女官が取り次いでくれた。
 女官に伴われて和成は部屋の中に入る。

 部屋の中央には大きな長方形の机があり、その両脇にはどっしりとした布張りの長椅子が置かれている。
 向かって左手の椅子に紗也が腰掛けていた。

 紗也に促され、和成は彼女の正面に座る。
 塔矢から預かった無線電話を手渡し、身を乗り出して画面を覗きながら操作を説明する。

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