月下の誓約

 5.戦鬼覚醒



「杉森の兵だな? こんなところで何をしている」


 浜崎兵のひとりが和成に問いかけた。

 帯刀している以上、民間人を装うのは無理だろう。
 正直に事情を話すしかない。
 信じてはもらえないだろうが。


「そこの崖から誤って転落しただけです。すぐに出て行きます」


 和成がそう言うと、浜崎兵たちは各々顔を見合わせてクスクスと笑った。


「そんな陳腐な言い訳が通用すると思ってるのか?」
「女連れで民間人でも装ってるつもり?」
「だったら刀は持って来ちゃダメだぞ。坊や」


 口々にからかいながら嘲笑する浜崎兵の一番後ろに、ひとりだけ真顔で和成を見つめている若者がいる。


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