月下の誓約

 7.一時の休息



 むせかえるような花の香りの中で和成は目覚めた。
 正面に見える天井が自分の部屋のものでない事はわかる。

 首を巡らせると殺風景な白い部屋の寝台に、ひとりで寝ているようだった。
 部屋中所狭しと花が飾られ芳香を放っている。

 どうしてこんな見知らぬ部屋で寝ているのか不思議に思い、記憶をたどり始める。
 そして、自分が死にかけた事を思い出した。

 だが、途中から記憶がない。
 紗也はどうなったのだろう。

 それが気になり、飛び起きようとして脇腹に激痛が走った。
 身体を支えようとして咄嗟に付いた右腕にも痛みが走り、そのまま寝台から転げ落ちる。
 腕に刺さった管に引っ張られ、側にあった点滴を引き倒し、大きな音を立てた。

 騒ぎを聞きつけて、白衣の男性看護師が駆け込んできた。
 そして床に這いつくばって動けないでいる和成に手を貸し寝台へと戻す。

 いつの間にか戸口に現れていた塔矢が冷めた口調で言った。


「おとなしく寝てろ」

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