月下の誓約


 いつもは女の子らしい華やかな色合いの着物を着ている紗也も、今日は兵士たちと同じ地味な鶯色の軍装束に身を包み、長い髪は後ろに束ねている。
 そして額に巻いた鉢金と両腕には、自軍の印をつけていた。

 そのせいか司令所にいる兵士たちは、和成と一緒にいる紗也が、誰だか気付いていないようだった。

 和成は皆に声をかけて紗也を紹介する。


「今回は総大将として紗也様がお越しです。開戦の合図は紗也様に発して頂きます」


 それを聞いて司令所中の兵士たちが、バタバタと慌てて立ち上がり、紗也に頭を下げた。
 同時に紗也も驚いて和成に尋ねる。


「私、総大将なの?」


 和成は呆れたように嘆息した。


「君主なんですから当然じゃないですか。開戦まで少しの間、そちらにお掛けになってお待ちください」

< 49 / 623 >

この作品をシェア

pagetop