月下の誓約


 四ヶ月前、紗也の父親である杉森国君主が急逝した。
 母親は紗也が生まれて間もなく他界している。
 紗也はたったひとりの身内を失ったのだ。

 少しして、父の家臣だった大臣たちが一堂に会して紗也に告げた。


「今日からあなたが杉森国の君主です」


 十三歳の紗也には、君主とは何なのか、何をすればいいのか、さっぱりわからない。

 幼い頃から、読み書きや計算を教えてくれたり、時々遊んでくれた塔矢が君主補佐官として紗也の側仕えとなった。
 その塔矢が三ヶ月前、紗也の護衛官として連れてきたのが和成だ。

 君主が国の頂点である事くらいは紗也にもわかる。

 初めて和成に会った時、”自分を”というより、国の頂点を、まだあどけなさの残る自分と大して年の違わないこの少年に任せて大丈夫なのかと、素直にその不安が口をついて出た。


「こんな子供に護衛なんか任せて大丈夫なの?」

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