月下の誓約


「知ってる人でも斬りますよ。あなたに害をなすならば。それが私の仕事ですから。
あなたに非難されようと、私は間違った事をしたとは思っておりません」


 紗也はまだ納得がいかないのか、黙って和成を睨んでいる。

 血を見せまいと背中を向けていたが、紗也の様子にたまらなくなって、和成は正面から紗也と向き合い怒鳴りつけた。


「あなたは刀を振りかざして向かってくる相手に、話ができると本気でお考えなんですか?! あなた自身が今、話も聞かずに斬られようとしたではないですか!」


 血まみれの和成に驚いたのか、紗也は一瞬目を見開いた後、半歩下がって和成から目を逸らした。


「彼はどうして私を斬ろうとしたの?」


 戦場にいながら、そんな事もわからないのか、と和成の苛立ちは募る。
 苛々と自らの腕につけた自軍の印を掴んで紗也に示した。

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