月下の誓約


「いかなる厳罰も甘んじて受ける所存です」

「それは俺の決める事ではない! 追って沙汰があるはずだ。覚悟しとけ!」


 突き飛ばすようにして和成から手を離し、塔矢は背を向けた。
 立ち去ろうとする塔矢に和成は尋ねた。


「……塔矢殿、犠牲者は……」


 塔矢は立ち止まり、背を向けたまま答える。


「ない! 俺が兵を無駄死にさせるか! かすり傷は何人かいるがな」
「ありがとうございます」


 ホッと安堵の息をつき、和成は深々と頭を下げた。


「おまえの為じゃない」


 そう言って塔矢は、振り向きもせず立ち去った。

 和成は俯いたまま、打たれた頬に手を当てる。
 熱を持ってヒリヒリと痛んだ。

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