True Love
…と、佐野くんが口を開きかけたその時だった。

扉が勢いよくガラリと開いた。


「つかさー、早く帰ろっ!」

そこには知らない女の子がいた。
華奢な体に、メイクばっちりな…可愛らしい女の子。

何科の子なのか、何年生なのかもわからない。

突然のことに、ただただ呆気にとられる。


「高野さん、ごめん。先約があったから」

「あっ…ううん!全然気にしないで…」

そっか…。
この子と帰る約束してたんだ。
…なんか恥ずかしい。

そんなこと知らずに、誘っちゃって…。しかも、かなり緊張して、声も震えちゃってたし…。

恥ずかしさに、俯くことしかできない。


「…誰?この子」

女の子の声に顔を上げると、睨むような鋭い視線と目が合い、ビクリとなる。

あからさまに嫌がられてるとわかった…。


「クラスメイトだよ」

「ふーん…。ねっ、早く行こっ!」

ぐいぐいと佐野くんの腕を引っ張る女の子。


「じゃあ、またね」

振り向き手を振る佐野くんに、私は頑張って笑顔で手を振った。
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