【完】うしろの席のオオカミさん


「郁磨ぁーっ!掃除サボるなー」



少し離れたところで大上くんといつも一緒にいる女の子達が大上くんの名を呼んだ。



頬に添えられていた手が耳へと移動し、くすぐったくて思わずその手を掴んでしまった。


重なった視線に目がじわっと熱くなってなぜだか分かんないけど、泣きたくなった。



行かないで。

なんて口に出せない。



口をきゅっと結んでただその目を見つめた。



聞いていいですか?


大上くんはわたしのことどう思ってますか?




「あんま可愛いことすんな」




あっさりと手は離され大上くんはすっと立ち上がった。


可愛いってなによ。
他の子にも言ってるんでしょ。


言ってるんだよね……


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