【完】うしろの席のオオカミさん


満開とはまだいえないけど、薄ピンク色で染まっている桜の木と真っ青な空を見上げてわたしは思い切り息を吸い込んだ。



目を閉じて風を肌で感じる。



ぎゅっと握られた右手の温もりがいつか離れていくんじゃないかと思い、強く握り返す。


大上くんがこちらに顔を向けた気がした。

目は閉じてて見えないけどそんな気がした。





「卒業、だな」


「んね……」




ゆっくりと目を開けて今度は校舎の方に振り返る。





「「ありがとうございましたっ」」




校舎に向かって深く上半身を曲げ、すぐに顔をあげる。


隣に立つ大上くんと顔を見合わせクスッと笑った。






新しい一歩を踏み出します。






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