【続】隣の家の四兄弟
隣の三者面談


「結局、三那斗んとこは浩一さん?」


帰りのHRのチャイムが鳴り終わるのと同じに、私は思い出したように隣の三那斗に聞いた。


「っそ。美佳んちは母さんだっけ? 最後だったよなぁ、確か」
「そうそう。それまで残ってなきゃなんないのがねぇ……」
「じゃあ、オレといればいいじゃん」
「はっ?!」


カバンに教科書を入れながら会話していた私は、思わず教科書を手から滑らせ声を大きくした。

隣を見ると、別になんら変わらない、フツーの顔した三那斗が私を見てるだけ。


――み、三那斗って、本当に……。


「天然っていうか、なんていうか……」
「天然?」
「や、いい。だめだ。その話したら、こっちの方が墓穴掘りそう」
「なんだよ、それ」


床に落とした教科書を拾い上げると、三那斗は不思議そうに首を傾げてた。
ジッとカバンを閉めて、それを肩に掛けると、私は教室の後方出口に足を向ける。
その私の背中に、慌てたようにして三那斗が投げかけてくる。


「え! おい。どこ行くんだよ?」


三那斗の声に足を止めて、くるりと振り返って答えた。


「三那斗のばーか。教室、掃除終わったらすぐ退出してなきゃなんないでしょ」
「あ」
「天気いーし、屋上か中庭でも行く?」
「おっ、おう」


自分では大胆なことを、恥ずかしげもなく言ってくるくせに。
いざ、私が、いい返事をしたら、少し照れるような顔するところが憎めないんだよね。

本当は私も、三那斗の気持ち、知ってるんだから突き放せばいいのに……。

だけど、どうしても。

“お隣さん”って以上、普通のクラスメイトよりも特別に思うことは否めなくて。
それは、恋心には成り得ないものだけど、捨てきれない情として、確かに私の中にある。



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