【続】隣の家の四兄弟
そんな目で見ないでよ。
そんな真剣な顔、部活以外でしないでよ。
動けなくなるじゃん――……。
私が固まって動けずにいると、三那斗の大きな手が、ゆっくりと私の顔に近づいてくる。
あと野球ボールいっこ分。そのくらいで触れられてしまう、と思って目を瞑ろうとしたときに、その手が引いた。
「……え……と」
「……だめだ」
「?」
ふいっと顔を逸らしながら、三那斗がぼやいた。
私は、触れられなかった安堵感と、三那斗の心を考えて良心が痛むのとでなんにも言えない。
「美佳に触ったら、離したくなくなりそうだし。そうしたら、完全に可能性がなくなる気がするし」
背中を向けた三那斗が、まるで独り言のようにぶつぶつと言う。
その背中がなんだか切なくて……でも、私は、懸命に普通に振る舞った。
「あ! 三那斗の番、そろそろかなぁ? ねーね。三那斗はさ! 進路とか決めてるの? 野球選手とか?」
……ちょっと、わざとらしかったかな?
だけど、これ以上あの雰囲気で二人でなんかいたら、ヘンになりそうだったんだもん。
大げさに声を大きくして、満面の笑みで、三那斗の背中に話しかけた。
すると、三那斗はゆっくりと体を回して、もう一度私を見てくれた。