【続】隣の家の四兄弟


夜になって携帯が鳴る。

メールじゃなくて、電話だ。

ディスプレイを確認するとお母さんからで、私はあれから三者面談のメールをしていたからそのことだと思って電話に出る。


「もしもしー」
『あ、美佳ぁ?わたし!』
「名前出てるから分かってるよ」
『そうよねー。そうそう、メール見たんだけど』


相変わらず明るいお母さん。

明るいっていうか、元気っていうか…うるさいくらい。
でもそんなお母さんが好きだったりするんだけど。


『来月の中旬よねぇ?』
「うん。夏休み前なんだけど。あ、でも無理だったら先生に相談―――」
『あ、ううん。多分大丈夫!…だと思う』


私の話を最後まで聞かないでお母さんが言葉を被せる。


そんなのもしょっちゅうだけど。
それにしても、まだ半月先のことなのに、“多分”とは言え珍しい。


「え?なんで?その辺りには家に戻る予定なの?」


お母さんはスタイリストをやってるから、これがまた飛びまわるくらい時間に追われているみたいで。

しかも収録が夜中とかが普通にあるからなかなか家には帰ってこなかったりする。

それなりに人望が厚いみたいで地方や海外もついて行ってるし、それがまぁ自慢だったりするからいいんだけど。


だけど、そんな中、その返事の仕方ってなんか変だなぁ…。


『そこら辺はお父さんから連絡いくと思うからー。あ、ごめん美佳!時間だから!』
「…お父さん?」
『じゃねー。あ、浩一くんによろしくー』
「あっ…」


ツーツーと一方的に電話を切られて、私は携帯を見て溜め息をつく。


「『浩一くんによろしく』って…」


唯一、お母さんが綾瀬家で面識のあるのが浩一さん。


「明らかに気に入っちゃってるよ…」


一人きりのリビングに渇いた笑いを漏らした。



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