【続】隣の家の四兄弟

ぼくはまだ少しだけど、ミカと一緒に生活してるから。
彼女の普段の姿を思い返して、そう即答した。

だって……。
確かに表情とか、話し方とかはまだ幼いかもしれないけど。
でも、ミカはいつだって人のことを気にして、そして自分の気持ちを抑えて我慢してる。

コドモなら、もっと欲に正直に生きてるはずだ。
欲しいものを『欲しい』って、泣きわめくはずだ。

ミカはそれを一度だってしない。
他人を困らせるくらいなら、自分が少し我慢すればいいと思ってるんだ。

アキラにでもセイジにでも当たり散らして、怒りをぶつけてもいいのに。
それなのに、ぼくに笑ったりして……優しいんだ、ミカは。


「……相当入れ込んでるのね、チハル」


少し目を大きくして、本当に驚いたといわんばかりの顔をしながらアキラは言った。
それに対して、なにも返す言葉は見つからないけど。


「でも、コウちゃんもいるみたいだし、激戦ね?せいぜいチハルも頑張るといいわ。わたしも引く気はないし」


不純にも――。

アキラの意気込みに、少し揺らぐ自分がいた。

セイジとアキラが上手くいったら……?
そうしたら、ぼくは。
迷うことなくミカをこの手で掴まえるかもしれない。
自分だけのモノにできるかもしれない。

そんな汚い〝欲〟がひょっこり顔を覗かせた。


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