【続】隣の家の四兄弟
「うん、大丈夫だよ。ちょっと休んだらいい」
ああ。聖二のこと、言えないかもしれないな。こんなふうに引きさがるなんて。
……いや、でも、ひとつだけ言い訳させてもらえるなら。
もしも、美佳ちゃんがおれの彼女だったら、絶対にこのままチハルになんか渡さないけど。
「〝また〟、電話するよ」
素直に引き渡すのも癪で、おれは普段そうそう電話なんかしないのにそんなひとことをわざと投げかける。
チハルの背中をじっとみて、その反応を待つと……。
「コウはやっぱり優しいネ。でも」
チハルは僅かに視線をおれに向けて、にこりと目を細めて言う。
「ぼくいるからダイジョブだよ」
結局は、〝同居〟という特権を持ったチハルに、今のおれが敵うものなんかなかった。
美佳ちゃんはおれを気にして、後ろ髪を引かれる思いをするような顔をしてたけど、結局そのままチハルに促されて家へと戻ってしまった。
ぽつんと廊下に立ち、柄にもなく苛立つ気持ちが制御できないでいた。
ガチャリと元来た玄関を開ける。
伏し目がちにしていたのをゆっくりと上げると、廊下の奥に全員が立っているのが見えた。
その雰囲気は、さっきまでのと同じような、微妙なものだとすぐに悟った。