製菓男子。
物思いに耽りながら、必要な材料を作業台に並べた。
今日は近所の奥さま方がルイスリンプとオレンジブレッドを習う。
ルイスリンプはライ麦パンのことで、円形のパヌトン型を使いながら花模様になるように形成する。
オレンジブレッドはコッペ型に形成する予定だ。
これはレッスンⅡのパートⅠの内容だ。


壁にかかっているカレンダーはその日のレッスン内容が書かれている。


「明日は公民館でケーキ教室」


公民館の教室は主に午前中に行われるので、明日は僕の代わりに藤波さんが何種類か作ることになっている。
藤波さんの腕なら申し分ないだろう。


その公民館では第一水曜と第三土曜はパン教室で、第二水曜と第四土曜はケーキ教室を開いている。
自分の店でやる教室のレッスン内容と違って、作るものは受講生の希望が色濃く出ている。
明日は二種類のグレープフルーツを使ったタルトにする予定だ。


自分の店で開く教室はホームメイド協会のテキストをもとにしているから、スーパーで材料や器具が売っていなかったり、高かったりするものも少なくない。
今日のレッスンで使うモラセスもその例に上がるだろう。
うちで学ぶ人は協会から、または製菓専門サイトの通販で買う人が多いようだ。


グレープフルーツタルトはお菓子作りをするだろう家ならどこにでもあるという材料だけで作れる。
ピンクとホワイトのグレープフルーツ、薄力粉、無塩バター、砂糖、バニラオイル、牛乳、卵、アーモンドプードルなど。
定員は十名で、明日もいっぱいの予定だ。
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