姫はワケあり黒猫様
「しっかり掴まっとけよー」
『うん』
勢いよく走り出すバイクが、私は好きだった。
風が頬を撫でるとことか、心地よい振動が体を揺らすとことか。
ゆっくり目を閉じると、風がより一層感じられて思わず頬が緩んだ。
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『ありがとう』
「おう、気をつけてな」
『…ちょっと離れるだけでしょうが』
「いやー?心配だなーと」
「お前、危なっかしいから」
那綺と成音はケラケラと笑いながら私を見ていて、ムッとした私はすぐに中等部の校舎に向かった。
ザワザワ
私を見る多数の視線は、私に痛いほど突き刺さる。
……それは、私が
「気持ち悪い。金目の不吉な黒猫」
……生まれつき、金目だったから。
那綺はと言えば何ともない目なのだ。
少しばかりは色素が薄いものの、それ以外はいたって普通。
まぁ、顔も整っていてモテるけど。
私に友達など居ない。
…あの2人が居れば、十分やっていけた。
後者を1番に出れば、もうすでに校門でバイクに跨って待って居る2人の姿。
「那琉、おせぇよ」
『ホームルームが長引いたの〜』
「いいからサッサと乗れ。
困った様にわたしの腕を引っ張って乗るのを催促する那綺に『倉庫?』と聞けば照れた様に「あぁ……」と呟いた。
何故照れる。
不思議に思いながらサッとバイクに跨って腰に手を巻きつければ、2人は同時にバイクを出した。