姫はワケあり黒猫様





最後に会った時より低くなった声に穂をを緩ませながらそっちを見た。





案の定、今日の目的の玲が居た。




「………久しぶりだな」





目の下の隈に目を取られながらそう言うと、玲は顔を歪めて「上、あがって下さい」と小さく言った。






開けっ放しにされていたドアを閉めながらその場の面々を見る。




「こんにちは」




そんな挨拶をして、座るように指されたソファにゆっくりと座った。




「………今日は一つ、言いに来た」



玲の肩はビクリと震えて拳をギュッと握り締めた。




「……伊音の件についてはすまなかった」




「成音さんの謝ることじゃ……!」




「いや、那琉に本当のことを言えなかった俺の所為だ。



お前も、何が十字架を背負っただ。







ガキが足掻くのもいい加減にしろよ」



ギロリと睨むと玲はグッ、と言葉を喉につまらせた。





「……確かに、玲の企画かもしれない。



だけど、那綺と那琉は喜んでいた。



彰さんも、陽奈さんも。





………あんな結果になったのも、朝霧の調査不足もあった。



だけど、終わったんだ。






そんなの仕方ないだろう?







那琉は、今、何してると思う?」






那琉、という単語に敏感な奴等。




本当、わかりやすいというか何というか…





「………何、してるんすか…」












「引き籠もってる。




何も食べず何も飲まず、何もせず。







ただただ、もがき苦しんでる。」









那琉、もう少し自分に素直になれよ。







「………っ何で…」





「…それはお前が考えろ。




ただ、俺が言えるのは






















那琉は、お前を待っていると思うぞ」












そう…






いつも側に居れたことがなかった、俺じゃなく













純粋に惹かれ、愛しあえたーー












お前を。










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