あなたが教えてくれた世界

*涙と温もり




ぼんやりとした頭の重さを感じながら、彼女は意識を取り戻した。


(うう……)


そう言えば少し頭痛もするし、身体全体が力が入らない感じもする。


……何があったのだったか?


未だはっきりとしない思考回路のまま、目を開くと、見覚えのない天井が目に入る。


(どこ……?)


皇宮の自室……ではない、こんな景色ではないはずだ。


それでは……。


(……ああ、そうだ、私、プラニアスに向かう旅の途中、ベリリーヴ侯爵のお屋敷に寄って……)


そこで……どうして今こうしているの?


自分自身に疑問を投げかけた瞬間、ようやく動き始めた頭が、直前の記憶を呼び起こす。


(……そうだった、私、睡眠薬嗅がされて……)


そう思い出すと同時に慌てて上体を起こ──そうとする。


「……!」


が、次の瞬間、何者かの妨害を受けて、彼女の身体は起こそうとした勢いのまま再びベッドに沈み込む。


両手首に違和感を感じて首をそちらに向けると、彼女のそれは頭上で一つにまとめられていて、拘束具はベッドと繋がっていた。


先ほど起き上がれなかったのはおそらくこのためか。


(これは……一体どういうつもりなの?ベリリーヴ侯爵がやったの……?)


突然の事態に戸惑う彼女は、それでも何度か引っ張って、拘束具から逃れようと試みる。



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