bloody mary

俺は昔、マリオだった。

ヒゲを生やしたオーバーオールの配管工じゃねぇよ。

娘を渇望し、マリナだかマリカだかいう名前を考えていた両親が、男として生まれた俺に適当につけた名前だ。

幼少の頃は名前のせいでからかわれることも多く、それに対抗しているうちに、俺はヤンチャな子供に育った。

だが、さして問題ない幼児期だったと言えるだろう。

様子が変わってきたのは、小学校に上がってからだ。

ピカピカのランドセルを背負って、楽しい学校生活を送り始めた頃。
新入生歓迎会的な意味も込め、小運動会が催された。

活発で身体を動かすのが好きだった俺にとっては、まさに晴れ舞台。
意気揚々とリレーのアンカーとしてグランドに立った。

バトンを受け取り、走る。
前のヤツを追い越し、走る。

風のように、走る。

だがゴールテープを切った時、上がったのは歓声ではなく悲鳴だった。

凍りつく保護者席。
ドン引きする児童席。
青い顔で駆け寄ってくる教師。

ナンダ?コレ?

俺は後ろを振り向いた。

白いグランドには点々と血痕が残っていた。
俺の通った道を、俺を追うように。

俺は体操服を見下ろした。

その白も、血に染まっていた…

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