bloody mary

「もう… だれ…も…
こんな めに‥‥‥ どうか…
くるし… ませんよ‥‥‥に
…だ…れ も… ぎせ…い… に
かみ‥‥ さ ま…」


顔だったであろう場所の口だったであろう部分に微かに亀裂を走らせて、焦げ人間は神に祈っていた。

もう誰もこんな目に遭わないように、と祈っていた。

年齢も、性別も、人で在ったことすら定かではない姿になって尚、誰かのために祈っていた。


「…
神ってヤツは忙しい。
これから起こるかも知れない、なんてコトまで面倒見てくれねぇよ。」


彼には人の心がないのか。

死を目前にした焦げ人間の美しい祈りを、唇を歪めたマリーは一笑に付した。


「‥‥ぁぁぁ… か…みさま…」


「俺は神じゃねぇ。
その逆だ。」


そうだ…
人の心がないのではない。

人ではないのだ。


「だから、おまえの願いを叶えてやれる。
言え。
おまえをこんな目に遭わせたヤツの名を。」


彼は…

月の光も差し込まない暗い路地に降り立った、死神。

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