bloody mary

「よく酔っぱらって暴れるし、騒音は酷いし…
その上、いつもお子さんを虐めてるのよ。」


「…児童虐待ですか。」


呟いた男の顔から笑みが消えたのを見て、中年女性は少し慌てた。

言い訳でもするように早口になる。


「私らも、初めは苦情言いに行ったり、なんとかしようとしたのよ?
でも、スゴくコワいのよ。
ヤクザモンだって噂もあるくらい。」


「…」


「本当よ?
アパートの他の住人も、前の町内会長サンまで脅されて引っ越しちゃったし、そのコの担任の先生なんかノイローゼになって辞めたらしいわよ?」


「そんなにコワい人が住んでるンですかぁ。
ご近所の方も大変デスねぇ。」


男が肩を竦めて縮み上がる。

その様子を見た中年女性は、ホっとしたように笑った。

そう、これが当然の反応だ。

火中の栗を好んで拾うヤツなどいない。
誰だって、自分が大事。

やはり賢く生きていくには、ドライが一番なのだ。

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