bloody mary

一度自室に戻ったマリーが玄関に向かうと、そこにはアンジェラが待っていた。

腕を組んで。
壁にもたれかかって。
眉間に深い皺を刻んで…


「やめとけよ。」


小さく、低く、アンジェラが唸った。


「もう、ナニもわかってない時とは違ェンだよ。
実の父親をアンタが殺した、なんてコトになったら」


「アンジー。」


「菜々はきっと苦しむ。
どんなクズでも、菜々にとっては父親なンだか」


「アンジー。」


不意に大きな手がアンジェラの口を塞いだ。

穏やかな呼びかけとは対照的な 容赦のない力。

それでもアンジェラは怯まない。
瞳に精一杯力を込めて、目線よりも高い位置にあるマリーの端正な顔を睨みつける。

その必死な眼差しを見下ろして マリーは笑みを漏らした。


「…クっ
コエー顔すンなって。」


「モガっ?!
モーガムグモガモっ!! モガ!!
(笑うな、話聞けよ、的な)」


「わかってるって。
だから、殺るンだ。」

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