蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~



あの時、絢乃が自分に向ける気持ちは恋ではないと慧も気付いていた。

絢乃は真面目で優しい性格だ。

絢乃が自分に向ける気持ちは、恋というよりは同情や申し訳なさの方が大きかっただろう。

それでもいい、いつか絢乃が心から自分を愛してくれるようになればと慧は思っていた。


しかしそんな時、慧はあの事実を知ってしまった。

――――自分達が実の兄妹であるという衝撃の事実。

しかしそれを知っても、慧の絢乃に対する想いは変わらなかった。

二十年近く心の中にあった恋情は、あっさりと世の倫理を乗り越えた。


自分にとっては絢乃が妹であろうとなかろうと、心に決めたただ一人の人であるという事実は変わらない。

罪の意識より、二十年かけて育った恋情の方が遥かに大きい。


――――しかし絢乃にとっては、そうではなかった。


絢乃が自分を男として意識し始めたのは三か月前だ。

これから関係を深めていこうと思っていた矢先に、しかも結婚した直後に、絢乃はあの事実を知ってしまった。

絢乃の心にひずみが生まれるのも当然と言えば当然だ。



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