蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~


絢乃が悩み苦しんでいる今、自分の気持ちを強引に押し付けたら絢乃の心は壊れてしまう。

そうなったら、――――破滅だ。

それだけは何としてでも避けねばならない。


そもそも踏むべき段階を踏まず、一足飛びにすっ飛ばしたのがひずみの原因だ。

絢乃の気持ちが自分に追いつくまで、今は待つしかない。

絢乃が自分を心から愛するようになれば、いずれ体の問題も解決するだろう。

それまでは、これまでのように絢乃を見守っていきたい……。


慧はそっと絢乃の頬に指先で触れた。

月明りの下、絢乃の肌は白絹のように清冽な輝きを放っている。

白く滑らかな肌は、いくら抱きしめても自分の腕から滑り抜けていきそうで、ひどく心もとない。


――――美しいものは、儚い。

無理にこの手に留めようとすれば苦しみと不幸を味わうことになる。

それでも……。


「……もう離せない。離せないんだ……」


慧は呻くように言い、絢乃の肩口に額を押し付けた。

肌越しに感じる温もりも、絢乃の肌から立ち上る甘い香りも……全てが愛おしい。


「ごめん。……お前だけは絶対に幸せにしてみせる。おれの全てをかけて……」


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