蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
微動だにできない絢乃に、沙耶は嫣然と笑った。
勝ち誇ったように絢乃を見下ろし、唇を開く。
「身を引くなら子供ができる前の方がいいんじゃないかしら? 慧の戸籍に傷がつくことは残念だけど、一生を棒に振るよりは、まだその方がいいわ」
「…………」
「今日はもう帰るけど……、また会いましょうね、『妹』さん?」
沙耶はサングラスをかけ、踵を返した。
絢乃とは全く違う、自信に満ちた『大人の女』の後ろ姿……。
絢乃は涙に滲む視界で、その背を食い入るように見つめていた……。