エリート外科医の甘い独占愛

「ブーケトス、参加しなくてよかったんですか?」

隣にいた伊崎先生が私の問いかける。

「べつに欲しくなかったので」

私の棘のある返答に、伊崎先生は戸惑の表情を浮かべ「そうですか」と言った。

気まずい沈黙が流れたその時、ワーッと歓声が上がった。

誰がリクエストしたのか、卓志が花嫁にキスをして、軽やかに抱き上げた。

マリアベールが緩やかにながれ、日の光に透けてキラキラと輝いて見えた。

「きれいです」

「……そうですね」

「あ、いえ、今日の野島さんが。白衣姿よりとても魅力的です」

「私が?」

何を言っているのかと怪訝そうに見上げると、伊崎先生は突然私の髪を撫でた。

「触らないでください」

ビクリと肩を震わせて声を上げると、先生は申し訳なさそうに言った。

「すみません、ここに花びらがついていたので気になって」

そういわれて自分で確かめると、結い上げた髪の間に、バラの花びらが1枚挟まっていた。

「あ、ああ。ライスシャワーの時のですね」

触られると思ったなんて、自意識過剰にもほどがある。

そう思った自分が可笑しくて、つい笑ってしまった。

< 16 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop