夜桜と朧月
藤崎と赤坂君、だ。

「……お前、何やってんだよ………!?」


赤坂君の声には怒りが混じっている。

「……マナ?どういう事……?」

藤崎の顔からも、解せないという戸惑いが滲み出ている。



赤坂君と藤崎は、私と楓のヨリが戻ることを期待している。


……でも、その期待には私は応えられない。





そして今も、詰問する二人が納得できる答えを用意していなかったから、無言で立ち尽くすしか出来ないのだ。




ぐっ、と手を引かれたのはどのくらい時間が経ってからなのか。


絡めた指先はそのままに、薫が赤坂君の正面に立った。



「……『楓』って、お前?」



もしかしないでも、薫は赤坂君の事を楓だと勘違いしてない?


雲行きが怪しくなりそうだったので、慌てて二人の中に割って入った。



「薫、違うよ。この人は友達の藤崎と赤坂君。高校の時の同級生で……」

「楓のダチ。で、アンタ誰?なんで椿と仲良さげにしてんの?」


喧嘩腰の赤坂君は、今にも薫に掴み掛かりそうな勢いだ。何とか上手く説明できないだろうか?


「真愛とは将来の事を考えた付き合いをしてる。ハッキリ言う。邪魔すんな」


薫のその言葉を聞いた赤坂君がカッとなり、薫の胸ぐらを掴んで凄味を利かせた。






< 57 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop