おうちにかえろう






「……え」




そこからは、速かった。



隣にいたはずの朔兄が、一瞬で消えた。



そして、気付いたときにはもう、檜山の腕を掴んでいた。



檜山と、3人の男たちの視線が、一斉に朔兄を捕えた。



その様子を見て漸く、俺も駆け出した。





「…………雨宮さん…?」




―――やっぱり、檜山だった。



ずぶ濡れで、目はうつろだけれど、間違いなかった。



何してんだよ、こんなところで、こんな奴らと。






「…何?あんた」


「誰だよお前」




男たちはなぜか喧嘩越しだったから、げんなりしてしまった。



朔兄と同年代だよな、多分。



いい歳してチャラチャラしやがった上にお約束の返ししてきやがって。



知り合いだよ、っつーかクラスメイトだ悪いかこのヤロウ。



感情に任せて、そう言い返そうとしたときだった。





「彼氏だけどなんか文句あんの?」




不機嫌そうな声に、目を丸くしてしまった。



おお、当分大人しくしてたから、すっかり落ち着いたと思っていたのに。



朔兄が珍しく、喧嘩越しだ。



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