おうちにかえろう





さっきだって、本当に…




“彼氏だけどなんか文句あんの?”





びっくりしたよ。



心臓、止まるかと思った。



何であのタイミングで、会ってしまったんだろう。






「風呂沸いたら先美月ちゃん入っていいからね、あったまっておいで」


「…えっ、いや、いいです、…悪いんで…」




頭にタオルを被った雨宮さんがすぐ横に居て、顔を覗き込んできたものだから、大袈裟に後ずさってしまった。


そしたら、あからさまにむっとされてしまった。





「…今日からうちに住むんだから悪いも何もねーだろ」




当たり前のように言われても、聞き流せなかった。


だって、…本当に?


本気で言ってるの?





「……あの……私、大丈夫なんでほんと……」
「何が大丈夫なの?」



言葉を被せられてしまって、何も言えなくなってしまった。


雨宮さんは、被っていたはずのタオルを首にかけて、真剣な眼差しを私に向けた。



その視線があまりに真っ直ぐだったものだから、心臓が波打つ。





「雨降ってんのに傘もささないで、男に声掛けられて言われるがままふらふらついていって、どうでもいいとか自分なんかどうなってもいいとかいう奴の、どこが大丈夫なの?」



「―――…」



…そんな、触れられたくないことはっきりと聞かないでほしい。


そう思うのに、嫌なはずなのに、…何でだろう。


眉間に、力が入る。






「今のこの状態で帰したら今度こそ取り返しのつかないことになりそうだからな、今日はもううちから出さん」




「監禁だ監禁」と言って腕を組んだ雨宮さんは、若干自棄になっているようにも見えたけれど、私はもう、目を逸らすことが出来なくなっていた。






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