おうちにかえろう
こんな状況で、再確認することになるなんて。
そうだった。
私、今、雨宮家にいるんだった。
昨日、みっともなく泣きながら、寝てしまったんだった…
「―――そんなわけで…」
「どんなわけだよ」
「喉渇いたから起きて下来たら、和室の豆電がついてたもんだから、何だろうと思って覗いてみたら美月ちゃんが寝てて…そんなこんなで隣に寝てみた次第です」
寝ているときもやっぱりフード着用の梅田さんの言い分は、結局分からなかった。
知りたいのは端折られたところです。
私と雨宮くんの気持ちはどうやら同じだったらしく、
「わけ分からん。とりあえず馬鹿なんじゃねーのか」
少々厳しめの突っ込みが繰り出された。
「…寝顔かわいいなと思って眺めてたら寝落ちしてた…」
にこっ…と力ない笑みでサラっと凄いこと言いましたけど、本気で何やってるんですか、梅田さん。
そう突っ込みたいけれど、私の今の立場からは何も言えません。
「…で、湊は何で?お前、昨日バンドで集まるって言ってなかった?」
「…………うん……メンバーで飲んでて………ごめんなさい、酔っぱらってたので覚えてません………」
こんなにも低姿勢な土下座、見たことがありません。
そう断言出来るくらいに、完璧な土下座だった。
土下座っていう行為そのものがめちゃくちゃ低姿勢なものなのに、その中でも低姿勢さを感じさせるなんて、よっぽどですよ、入間さん。
「…俺っ…大丈夫だったかなぁ…!?酔っぱらって変なこととかしなかったかなぁ…!?美月ちゃんに…っっっ…」
「……頭上げてください入間さん……」
「いや、でも、も、もしかしたらどっか触っちゃったりとかしちゃったりとかしてたらアレだから謝らせてください…!!ごめんなさい…!!」
正直、謝られてもどうしていいものなのか分からない。
とりあえず、「頭を上げてください」と言い続けることしか出来そうにない。
「……みなちゃんの浮気者……」
「っっわーーーー!!!ち、違うんだってば雛ちゃん!!!ほんと、違うんだって!!!!」
(…やっぱり付き合ってるのかなこの2人…)
入間さんと梅田さんの会話を聞きながらぼんやりとそんなことを思ったけれど、
「何でもいいけど飯出来るから席つけよお前ら」
雨宮くんの言葉にかき消されて、本人たちに聞くことは出来なかった。