おうちにかえろう

実質、保護者







部屋の片づけが終わってすぐに、お父さんにメールをした。



延ばし延ばしにしてもいいことなんてないって、分かっているから。





“他に住みたいところが出来た。申し訳ないけれど、引っ越したい”





ざっくり言うと、そんな感じのことをメールした。



最悪、連絡は来ないかもしれないと思っていたけれど、予想に反して、電話がかかってきた。



私の携帯電話がお父さんの番号を表示させるなんて、初めてかもしれない。



それくらい珍しいことで、携帯電話が鳴ったときは、手が震えてしまった。



恐らく、通話ボタンを押せたのは、着信音が何度も同じ音を繰り返していた頃。



心臓は今にも飛び出そうで、最初の声は、みっともなく震えた。







【…美月ちゃん?ごめんなさいね、お父さんの電話からで…】




かけてきたのは、あの女の人だった。



一気に脱力感に襲われたのと同時に、心の奥底では少し、ほっとしていた。




そうだった。


お父さんは、私と話したくないんだった。




改めてそう思わされて、そうしたら、お父さんと話すことに緊張して手まで震えさせていた自分がみじめで、笑えてきた。



本当は頼りたくなんてない。



だけど、悔しいけれど、今頼れるのはこの人だけだった。



だから、詳しくは話さなかったけれど、どんな所に住むことになるのかだけは伝えた。





【あとのことはこちらでやっておくから、心配しないでね。片付いたらメールください】





詳しく聞かれることもなく、責められることもなく、反対されることもなく、とんとん拍子に話は進んだ。


…予想はしていたけれど、やっぱり予想通りだった。



誰も、私がどこでどう生きようが、どうでもいいのだ。



興味がないのだ、何も。




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