おうちにかえろう
『美月ちゃんごめんね!!怒らないでね!!』
『つーか何やってんの俺ら…』
入間さんの謝罪も、雨宮くんの呟きも、何も耳に入って来ない。
さっきから血の気は引きっぱなしだ。
もう、息をすることすら、忘れるくらい。
―――とにかく、電話を取り返さないと。
それで…なんて言う?
ごめんなさいって言えばいいの?
私、さっきまであの人と、何話してたっけ?
あまりの事態に、パニック状態に陥ってしまった。
ガラッ…
『!!!』
どれくらい時間が経っただろう。
恐らく、2分も経っていないんじゃないかと思う。
また玄関のドアが開いて、雨宮さんが出てきた。
なぜかにんまり満足顔で。
手には、やっぱり私の携帯電話が握られている。
『…はい、ありがと』
『っ…』
締め付けられる手の力が弱まった瞬間をついて、入間さんと雨宮くんの手を振り払った。
それとほぼ同時に、雨宮さんから携帯電話を奪い取った。
『…ななな、な、な、…な…っ』
『何話したかって?』
な、しか言っていないのに、雨宮さんには私の言いたいことがわかったらしい。
そう聞かれて、必死になって何度も頷いた。、
『大人同士の話』
人差し指を口元に当ててにんまりと笑って、そんなこと言われても、納得できるわけがない。
何度問いただしても教えてくれることはなく、見事にスルーされてしまった。