おうちにかえろう





パチンと玄関の電気をつけてから、そう言っては見たものの、誰からの返事があるわけでもない。


むしろ、あったら問題なのだ。


私は、一人暮らしをしているんだから。


引っ越したばかりの賃貸マンションは、新築というだけあって無駄に綺麗だ。


その綺麗さが、逆に静寂さに拍車をかけているような気もする。


まだツルツルの廊下を歩いて、真っ暗なリビングへと向かった。


電気をつけて、視界が一気に明るくなる。


広がるのは、いつも通りの殺風景なリビング。


無駄なものは一切置いていない。


あるのは、テレビと、電話と、テーブルくらいだろうか。


生活感はまるでないと思う。


お洒落で可愛い棚を買って、部屋を飾ろうとか、可愛らしいカーテンを選ぼうとか、そんな感情は全く生まれなかった。


全部無駄。


お金もそうだし、時間もそう。




ただ、勝手に用意されたこの空間に、居るだけ。



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