君に恋する物語
あの日の君が同じ学校に通っていたのだと知ったのは、2年のクラス替えの時だった。

初めは君だと気づかなかった。

君はとても穏やかに笑っていたから。

春の日差しみたいに。

柔らかく、暖かな微笑み。

ああ、笑えるようになったんだ。

僕は他人事なのに安堵した。

よかったと思うと同時に少し残念な気もした。

僕が一方的に君を知っていただけで、君は僕を知らない。

話しかける必要もなく、僕らはただ同じクラスにいただけだった。

なんとなく視線の端が君をとらえる。

それだけなのに。

なぜだろう?

あの日の君と、

クラスにいる君がうまくつながらない。

どちらの君が本当の君かなんて、

僕に判るはずないのだけど、

少し控えめに、だけどよく笑う君が、

なんだか窮屈そうに見えた。


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