奪取―[Berry's版]
 本来ならば、本社に現場担当責任者や企画部の人間を集め会議を開くべきものなのだろうが。人伝の言葉だけではなく、現場の雰囲気や熱を喜多自身が把握しておきたい気持ちが強かったのだ。故に、喜多が直接施設へ足を向ける形となった。
 このように、喜多が現場へ顔を出すことは珍しいことではない。まだ若い、経験が浅い、親族の七光りと噂され、隙あらば足を引っ張ろうと試みる人間に囲まれながらも。任される全ての仕事が、今の地位を守り、更には確固たるものにするために必要な過程であると、喜多は考えているからだ。どんなことにも、手を抜くわけにはいかない。
 結果、喜多のスタイルを慕い集まってきた人材と、彼が今まで残してきた業績は評価に値するものであることは誰もが認めるところとなってもいた。
< 111 / 253 >

この作品をシェア

pagetop