奪取―[Berry's版]
「まあ……途中経過ではあるからね。でも、調べた事実は書かれている通りだ。それをどう捉えるかは、俺達が関わる問題じゃない」

 肩を竦めた喜多の言葉に、春花は眉間の皺を深める。
 報告書には、春花が数年前からサポート及びプロ―デュースをしている若手歌手の動向が書かれていた。春花から受けた依頼が、それである。
 対象は、春花が3年ほど前から懇意にしているその若手歌手。春花よりも10歳年下の26歳。彼のクラブハウスでのステージを、偶然春花が目にし、スカウトしたことが発端らしい。彼女が一目ぼれするほどだ。容姿はもちろん、歌唱力も申し分なく。今では人気急上昇中の歌手でもある。
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