病原侵食
「……ねぇ、奥さんには気付かれていないの?」


彼が私の部屋に入り浸るようになって半年。


幾ら上手く隠そうとも、幾ら無関心でも、本妻が気付かない訳はないだろう。


そう言っても過言ではないほど、彼は私と過ごす時間の方が多くなっていた。


「……アイツか。気付いてるだろうな。最近は、子供達も俺には一線を引いている。……まるっきり、あの家には居場所がなくなってしまったな……」


……後悔してるの?


そう口に仕掛けて言葉を飲み込んだ。


『後悔してるんだ、お前とこういう仲になってしまった事』


そんな言葉を、あなたからは聞きたくないから。


……ねぇ、奥さんとは別れてよ。



幸せじゃない夫婦生活を続けるぐらいなら。


私があなたを幸せにしてあげるから。




家族に蔑ろにされていると、ぽつりと漏らすあなたの背中があまりにも痛々しげで。


私は見たことも会ったこともない奥さんに対して、静かに憎しみが募っていった。


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