迎えに行くよ
桜ノ木ノ下

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こんなにわかり易い場所にいるのに、なんで






声にならない声が、溶けかけた青い空に消えた。
三月の気候は不安定で、先日上着が必要ないくらい暑かったのに今日は少し肌寒い。
大樹にもたれた体が小さく震える。

学校の中庭は園芸部のテリトリーだ。
様々な色が鮮やかに春を主張している。
中でも中心にある大きな桜の木は、昨年より少し早い開花予報と共に満開の花を咲かせていた。


その根元には春には多少外れたモンブランの髪。



季節外れのその色を除けば、彼女の容姿は花に引け目を取らないほど綺麗だった。
何を考えているか分からない真っ黒な目が、突然彼女の上に落ちた闇に顔を上げる。




彼女---花櫛悠海【はなぐし ゆうみ】が待ちわびた人物とは程遠い、屈託のない笑顔がシャベル片手にそちらを見下ろしていた。




「まーた、こんなところにいるー」





間延びした声で桜の花びらが舞う。





「おさぼりー? 」





「ちがうもん」


彼女はムスっと頬を膨らませて、そっぽを向いた。
頭についた桜の花がその拍子で肩に滑り落ちる。
子供じみた悠海の表情を見て、負けじと子供じみた容姿の彼は楽しそうに笑った。



「うみさんは、回りくどいことしますねぇ」



「ほっといてよ」




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