あの頃…
「佐々木さん?」

呼びかければうっすらと瞳を開ける

視線が合い、ほっと息をつく

「えっと、担当になった立花です。午前中にひどい貧血で運ばれてきたのだけど、覚えてます?」

考える風情を見せた後、小さくゆっくりと首が上下する

「子宮からの出血があって処置をしました。完治すれば大丈夫だそうです」

よかったね

そう言っても彼女の反応は薄い

「ええっと、周りに看護師たくさんいるし、私もいるから何かあったらいつでも言って」

彼女にわからない様にふと息をつき、医局に戻る

「立花」

無意識に視線が下を向いていたようだ

視線を上げると漆黒の瞳が飛び込んでくる

「なんでしょうか」

「お前、その自信なさ気な顔で患者の前立つなよ」

そういって海斗はパソコンに視線を戻してしまう

むっとして反論しようと口を開くけど、

確かに今の自分はひどく暗い顔をしてるような気がして何も言えない

「佐々木さん、目を覚まされたんですけど元気がなくて」

「まだ麻酔が切れたばかりだろう。それに」

中絶手術の後で元気にしてろという方が酷というものだ

「それにつられてお前まで落ち込んでどうする」

「…はい」

ご最も
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