あの頃…
「またここにいたんだ」

穏やかな声が頭上から振ってきて、ふと視線を上げると

「塔矢先生」

看護師の中でも海斗とは違うかっこよさがあると人気の(莉彩情報)塔矢がいた

「荒井先生なら」

ふと視線を奥の方に向ける

「ああ、まったく。いつもいつも」

言いながら階段を下りてきた塔矢はふとしるふたちがいる空間を見渡す

「今日は黒崎と一緒じゃないんだ?」

珍しい

「はい。知らない間にうまくなって、少しは驚かせてやろうかと思って」

あの変わらない瞳に少しでも驚愕の色が視えたらしるふの勝ちだ

「っていっても、きっとこれ位出来て当たり前だ、とか言うんですけどね」

何偉そうにしてるんだ、と見下ろされるに違いない

「口ではそう言っててもちゃんと評価してるよ」

しるふの小さなため息を聞き取って、塔矢が笑顔を見せる

「そうは視えませんけどねー」

「少なくとも今まで海斗がここに研修医を連れてきたことはないよ」



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