あの頃…
このブラウンの瞳が、出来るだけ哀しい色を映したりしない様に

ただ患者を助けることだけを考えていられるように

そう、願っている

「じゃあ、約束してくださいよ」

さらさらと頬を撫でていく風はとても穏やかで

けれどほんの少し冷たくて

火照っているであろう頬を冷やすにはもってこいだ

「絶対に医者を辞めたりしないって」

黙ってついて行けば医者にしてくれるのなら

絶対に自分の前から居なくなったりしないで欲しい

ずっとずっと、届かないけれど見なくはならない前を歩いていって欲しい

そうしたらずっとついて行くから

そして、いつか必ず並んでみせるから

「ああ」

そう頷いた海斗の瞳は今までで一番優しかったように思う

海斗の言葉に嬉しそうに笑ったしるふの笑顔も、今までで一番綺麗だったと思う
< 84 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop