赤い結い紐
千珠は黙って首を振り、灰皿を差し出した。

由加里はタバコを吸っていたことを思い出したかのように、くわえていたタバコを灰皿に押しつける。

「マジなの?」

「うん」

「はぁー、ほんとあんたって子は、厄介(やっかい)な奴に惚れちゃったわねぇ」

「うん……」

由加里は考え込むように新しいタバコを吸いながら、ぼんやりと宙を見つめ、ぬるくなったウーロン茶を飲んだ。

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