赤い結い紐
「ほんと? どこにあるの? ちょーだい!」

千華がテンションを跳ね上げて、部屋を見回した。

いつものように、一緒になってウサギが飛び跳ねる。

「まだ、買ってないんだ」

苦笑いしながら言って、

「一緒に買いに行くか?」

訊いてみると、壊れたおもちゃのように千華が何度も首を縦に振った。

「ちょっと待ってて、着替えてくるから」

そう言い残して、千華は二匹のウサギと共に、廊下へ消えていった。

そんな後姿を見たら、今じゃないとはもちろん言うこともできず、

武はため息をついて洋服を着替えるために箪笥の引き出しを開けた。
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