赤い結い紐
確かに武は方向感覚というものが余り鋭くなく、家の回りだけでも、迷わなくなるまで結構時間がかかっていた。

レイラと住み始めたばかりの頃などは、あまりに武が迷子になって帰ってこないので、

レイラ達の知り合いに会うたびに家の方向を教えられていた。

時には、心配そうに後ろをついてくる人までいたりした。

後から聞いたところによると、レイラ達が手を回して、武を見かけたら家の方向を教えてくれるように頼んでいたらしい。

もちろん千華と住むようになってからは迷うことなどほとんどないのだが、ジンによって何度もおもしろエピソードとして語られるのを聞いていた千華の頭には、

“武の一人歩きは危険!”とインプットされてしまっているみたいだ。

  
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