赤い結い紐
「聴こえる?」

「ああ」

「これで聴けばいーよ」

武はイヤホンを外して、音楽をとめた。

「でもこれ、どーしたんだ?」

武が訊くと、千華が「ふふふ」と微笑んで言った。

「ジンさんがこの前持ってたのを思い出したから、もらってきちゃった」

「そうか。でもジンがなんでこんなもの持ってるんだ?」

「なんかねぇ、麻雀で勝って借金の形に貰ったんだって。

この前『いるか?』って訊かれたんだけど、あたしコンポ持ってるからいらないって言ったの。だから武が貰っとけば?」

千華が意地悪そうに微笑んだ。

「どうせジンさんが持っていたって、しょうがないしね」

確かにあのジンが焼酎のビンを傾けながらMDを聴いている姿を思い浮かべると、あまりにも不釣合いだった。

「そうだな、じゃあ貰っておこうかな」

「うん、そうしなよ」

「ああ、ありがとな」

「その代わり、あたしにもダビングさせてね」

そう言って、千華がかわいく笑った。


< 220 / 292 >

この作品をシェア

pagetop