赤い結い紐
「違うよ、そんなんじゃないの。

うまく言えないんだけど、何かこうモヤモヤしてるというか」

呟いて、千珠は白と青のチェックシャツの胸の辺りに手を当てた。

「ふーん、またなんでそんなに気になるのかしら?

いったいその日、何があったのか話してごらんよ」

ロングサイズのグラスを両手で包み込むように持ち、

まるでそこに答えがあるかのように、オレンジ色の液体を見つめる。

「服をめくられそうになった」

「痴漢されそうになったってこと?」

千珠の言葉に驚いたように目を丸くして、由加里が問いかける。

「うん、そうなんだけど。わたし怖くてひっぱたいちゃったのよ」

「当たり前じゃない。そんなやつ警察に突き出してやればよかったのに」


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