MAGIC HIGH SCHOOL ~第二章 円形闘技場~
龍と少女


 ……気がついたら、私達は森林に近い草地のちょうど真ん中にいた。


“魔界にも森ってあるんだ。すっかり砂漠だけかと思ってた”



「陽梁……実はさ、ちょっと気になった道具を見つけてさ」



そう言いながら私は、2つのナイフをリュックの中から取り出した。



「ふーん……ナイフね」



そう言いながら、彼女は鞘からナイフを抜き差ししたり、試しに何かを切ってみたりなど、色々していた。



「とにかく、見つけたの! どうする? 陽梁から取る? それとも、一斉に1本ずつ取る?」



「一斉に取る方がいい。その方が公平じゃん? んじゃ、シャッフルするよ」



陽梁は、再びナイフを鞘に収め、混ぜ始めた。手つきが素早い。なんだか手慣れてる。


「……よし」


「んじゃ行くよ!」


「うん!」




『いっせーのーせ!』



 私達はナイフを手に取った。




“ドクンッ”
 

私がナイフの持ち手に触れた時、何かの波動を感じた。



“どういう意味?”



私はただならぬ気配と波動をこの剣に感じた。





“今の、陽梁見てなかったかな?”



慌てて見ると、陽梁は今夜の寝床を探していた。



 

そうこうしている間に夜が来た。



私達は、陽梁が見つけた寝床で食料を食べ終え、くつろいでいた。




私はナイフを準備しながら言った。



「ちょっと散歩に行って来る」



「……良いけど、襲われても知らないからね」



……陽梁らしい言葉だ。でもそう言いつつ陽梁は絶対に助けてくれる。陽梁のいい所だ。





私は苦笑しながら、茂みの中へと入って行った。例の波動を確かめる為だ。




陽梁がいる場所から、30mほど歩いた。気が緩んだのか、鼻歌でも歌いながら散策していると、突然ある物が無くなった。ナイフだ。何かの拍子に落としてしまったらしい。




「えっ? 嘘、どうしよう」




慌ててさっき来た道を戻る。すると、茂みの中に、何かが光っていた。紫色?いや、これはアメジスト色だ。何かの本で読んだ事がある。宝石の1種だ。そのような事を思いながら茂みを見ると、そこには私が落としたはずのナイフがあった。ナイフから何かに姿が変化している。無理やり止める訳にもいかない。というか止め方が分からないし。止めようがない。



 
それは、1匹のドラゴンに姿を変えた。よく見たら龍だ。龍とドラゴンのハーフ? まぁそんな事はさておき。


ドラゴンは、雄叫びを上げた。


「ちょっと! 静かに! 静かに!」



身振り手振り、ボディーランゲージ全開で私はドラゴンに注意を促した。暫くすると、私の言いたい事が分かったのか、ドラゴンが静かになった。




「あ……あのさ、実は」



私はドラゴンに小声で話しかけ、陽梁の所まで連れてってくれるよう、頼んだ。



すると、私の中に声が流れ込んで来た。



“分かったよ、里依。仰せのままに”



そう言ったかと思うと、ドラゴンはでかい翼をはためかせ、低空飛行で、陽梁の所へ向かった。いつの間にか、木に止まっていた。



“ここ?”


“うんっ……ありがと。本当に感謝してもしきれないよ”


“いいえ。お互い様だよ……僕の名前は、マーク。これからよろしく”




そう言い終わると、ドラゴンは剣に戻っていた。




私は地面に降り立っていた。





マークって言うんだ。かわいい名前。





この事、陽梁には秘密にしとこう。



 


ドラゴンと私。悪くないな。





そう思いながら眠りについた。


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