MAGIC HIGH SCHOOL ~第二章 円形闘技場~
誰にも言えない秘密


期末試験が終わって暫くした後、私は学校を休んだ。持病の悪化の為だ。


表向きは風邪で休んでる事になっているけど、陽梁は本当の事を知っている。

私、喘息持ちなんだ……。


家のチャイムが鳴った。


「里依。大丈夫? 風邪って言ってたけど、喘息の発作がおきたんでしょ」


はい。大当たりです。


…全く陽梁は、探知系の術を持ってるんじゃないかと思うくらい鋭い。



「無理しないでよ……早く連絡してくれれば治したのに」



陽梁は第2の術、ネプチューンで私の治療をしてくれた。


「ありがと。大分良くなったみたい」




これは本当。さっきまで話せなかったもん。




「あのね、図書室の禁書の棚で、気になる本を見つけたの」



そう言って陽梁は、大きな本を取り出した。陽梁は先生と仲がいいから、普通は読めない本を借りられる。ハート・ブレイクの事もあるし……



本には題名が無かった。


陽梁がページをめくる。


「ほら、見て」



そのページには、あの伝説が書かれていた。



[翼竜が目を覚ます時、古の王が蘇り、世界は永遠の闇に落ちる。

メシアは六に存在し、八つの力を極める。

メシアは世界の存続か壊滅かを決定するだろう]



図書室の禁書の棚の本は、なかなか読ませてもらえない。でも、何で笠本さんが知らなかった伝説が図書室の本に載ってるの?


「でね、私が気になってるのはこれ」


陽梁が別のページを開いた。



[掟は破られ滅びた術が蘇る。
友の魂を王の言葉が貫く。
勇者が二人を助け出す。
二人がお互いに許し合い、信じる時、巨大な力が誕生するであろう]




何でこれが気になるの?



「最初の文。掟は破られ、滅びた術が蘇る。クイーンは、魔界の掟を破った。そして……伝説の滅びたはずのハート・ブレイクが蘇った。この伝説、私の事を言ってる気がしてならないの……」



「確かに最初の文は当てはまるかもしれない。でも、後の文は? だいたい勇者って誰なの?」



「伝説とか予言っていうのは、常に曖昧なものでしょ。とにかく、気になるの」





陽梁の勘は、バカにしない方がいい。異常なくらい当る確率が高いから……











今から1時間前、私は陽梁が来るまで、ベッドでひたすら咳き込みながら、朦朧とする意識の最中、こんな事を考えていた。



もし自分が何の病気も持ってなくて、文字通りの健康だったらって事を。



それには理由があった。



それは自分の出生から始まる。




本当の事を言っちゃうと、本来なら私は今、ここにはいない。本来なら、中学3年生。



だって私は……予定より3ヶ月も早く生まれた、未熟児だったから。





私の誕生日は、1月14日。そして、本来の自分の誕生日は4月22日だ。





つまり、誕生日が2回ある訳だ……まぁ、私はあんまり気にしないんだけど。





そして、未熟児とか色々言ってるけど、正式な名称は[低出生体重児]と言う。

定義は、2500g未満の赤ちゃん全員をひっくるめた総称。更にそれから3つのランクに分かれている。


2500g未満が未熟児。


1500g未満が極小未熟児。



そして……なんと、1000g未満もいるのだ。



私には到底信じ難い。1000g未満は、超未熟児と呼ばれている。




私は、15年前、僅か744gでこの世に誕生した。あまりにも小さく生まれ過ぎた為、その年一杯入院する事になった。そして、その年の暮れに退院した。




けれど、退院してからも、風邪を引いては即、病院に入院していた為、あまり家にいたという記憶は無い。それに、生まれつき喘息も患っていて、風邪で入院していたと言っても、殆どが風邪の度に喘息発作が誘発されて、重篤に陥った事が頻繁にあったからだ。




このままでは、私の命が危ない。そう判断した私の主治医は、私が5歳になった時に気管支の手術をする事を決めたらしい。



私の気管は、他の人と大分違っていて、私が生まれた時、この厄介な気管がまだ丈夫に出来上がっておらず、気管自体がまだ柔らかい状態だったのだ。




私の命を助ける色んな治療をする中で、何らかの拍子で柔らかい気管支の一部が潰れてしまい、それらを治す為に、この手術をしたのだった。




6時間にも及ぶ大手術だったけど、奇跡的に成功し、1ヶ月後に退院した。






けれど、小学校に入っても、3年生までは、なんとか学校には行けたものの、入退院を幾度となく繰り返していた。






何でこんな弱い体に生まれたんだろう。


神様のバカヤロー!!!!!



< 3 / 18 >

この作品をシェア

pagetop