弁護士先生と恋する事務員
車の窓から見える景色は川のようにどんどん流れ移り変わる。
暗い住宅街を抜けてまぶしいネオンが輝く繁華街へ着いた所で
先生と私はタクシーを降りた。
「まずはゲーセンか。」
迷わず進んで行く先生の後を、私は慌てて追いかける。
あちこちのゲーセンに入っては店内を見渡し歩くけれど
それらしい集団はいなかった。
「今何時だ、もう九時か。中学生はとっくに追い出されてる時間か。」
先生は矛先を変えて、繁華街から少し離れて
コンビニや大型書店、レンタルDVDショップ、カフェなどを
足早にチェックして歩く。
ずいぶんと住宅街付近に戻ってきた頃、
コンビニの外にたむろする、中~高校生ぐらいの集団を見つけた。
7、8人はいるだろうか。
まだ線の細い体つきで、中学生ぐらいとわかる茶髪ピアスの子から
大人の私でも萎縮してしまいそうなイカツい坊主頭までいる。
「先生、あの子達気になりますね。」
「ああ、ちょっと様子見るか。」
私と先生は、つかず離れずの位置で電話をかけるふりをしながら様子を窺った。
「おい、今日医者の息子どうした?」
「カネ持って出て来いって呼びだせよ。」
(!!)
いきなり核心に触れた会話が飛び込んできて、私と先生は耳をそばだてる。
「それがアイツ家出して来たとか言い出したんスよ。」
「家出したらカネ持ってこれなくね?フザケんなって。」
「とりあえず、財布とスマホだけ置いて帰らせました。」
茶髪ピアスの子が、黒い財布とスマホをイカツい坊主頭に見せている。
(やっぱり――!)
「先生…」
「尊のだな。」
小声で確認し合う先生と私。
先生は少年たちにゆっくりと近づくと
「おい、それ尊のだろ。神原尊。俺が返しておくからよこせ。」
「うわっ、なにコイツ」
突然現れた声の低い身長183cmの日本人離れした超絶オトコマエなオジサンにかなり驚いた様子。
先生を毎日見慣れている私でも、こうして見るとあらためて先生は迫力があるなあと感心する。
体の大きさだけでなく、精悍でいて甘さを含んだ顔立ちや、整えられた顎髭や、全体からにじみ出てくる特別なオーラ。
ワイルドさと大人の色気という相反するものをもった先生の雰囲気に圧倒される。